公的空間に設置される美術作品としての彫刻作品は,作品内容と存在意義が乖離しやすいという特有の性質があり,この性質が市民に彫刻作品の存在意義を認識しにくくする要因になる。本報では,この性質をふまえ,作品内容がどのようなものであるべきなのかという点について考察した。まず,公的空間に設置される美術作品としての彫刻作品の存在意義を,1)良好な景観形成を目的とするもの,2)地域の個性の表現を目的とするもの,3)文化振興を目的とするもの,という3つに類型した。各類型および類型に入らない「母子像」の類に関して,存在意義と作品内容の間に具体的な関連性を見出せる事例を抽出しながら,両者の関係を論じた。具体的な事例を上げにくい場合,両者の関係について定性的な整理を行なった。いずれの類型においても,存在意義と作品内容の間に関連性を確立するのは可能である。しかし,設置場所との関係,作品内容決定のプロセスの活用に対する配慮が重要である。
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