日本語教育の推進・拡充のために2007年に文化庁に創設された文化審議会国語分科会日本語教育小委員会の議事録を分析対象として,「日本語学校の非常勤講師」が想定されるカテゴリー化の実践が議論においてどのように行われるかを成員カテゴリー化装置の概念を援用して分析し,公的な議論のメンバーに共有される「日本語学校の非常勤講師」についての文化的規範を描き出すことを試みた。分析の結果からは発言の理解に,「非常勤の献身的な貢献は労働条件に左右されない」,「有償でも提供している日本語指導を無償でも提供しうる」,「非常勤の指導経験は専任の指導経験とは異なる」といった文化的規範が用いられていることが明らかになった。そしてそれらが描かれ,同時に行為を達成する過程で「非常勤」は「日本語教員」や「日本語教師」といったカテゴリーの中で同一ものもとされ,そのことによって不可視化がなされていることが明らかになった。
抄録全体を表示