都市工業の主柱をなす消費財工業の中で,日用消費財の地域的分布と構造を知るためにこの研究を行った.また,従来のこの種の研究が個々の事例的研究か,地域研究の一環としておこなわれていることから,それらの位置付けを試みようと考えた.小零細経営である本業を工業統計表から摘出し,対象業種を決定し,その分布地域を明らかにし,分布形態から2つのタイプの日用消費財工業を分類した.即ち, (1)分散タイプ(2)集中タイプ,さらに集中タイプには城南・城北集中と城東集中がある. 2つのタイプは都市域の近在必要製品と,輸出あるいは内需製品との2つの性格に分けられる.
生産の形態からは,分散タイプには生産を統括する問屋もしくは問屋的機能の存在がみられずメーカーが直接小売,ユーザーと結びついている.それに対し,集中タイプは輸出雑貨ではバイヤー,内需雑貨では問屋が存在するがともに生産の統括者ではない。東京の日用消費財生産の中心を成す城東地域では,製造卸が実際の製造者たる加工業を組織し生産を支配している.この製造卸は,問屋が製造部門を拡充独立させたものと,かっての職人が変化したものがあるが,何れも日用消費財生産総量の増大にともなって中心と成りえたものである.東京においてはこの製造卸が中心となり,加工業地域,下職地域の分化がみられ従来考えられていた問屋制生産とは異った地域構造をもっている.
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