クロム染料とクロム(III)塩との反応によって染料:クロム=1:1錯塩と2:1錯塩が得られるが, その生成機構の詳細を検討して,含金属酸性染料の製造の資料とする。
予備実験としてo,o'-ジオキシアゾ染料とクロムミョウバンを水溶液中で加熱反応せしめ(以下クロム化反応とよぶ)その挙動を円形ロ紙クロマトグラフィーにより観察した。水溶性錯塩のみを形成する染料3種をえらび,そのクロム化生成物を粉末セルロースカラムを通して, それぞれの1:1錯塩と2:1錯塩を単離した。同じ3 種の染料について, そのクロム化反応を分光光度法により追跡した。
クロム染料の構造によって,クロム化反応の初期から沈殿を析出するものと,水溶性錯塩のみを生成するものとに二大別でき,前者のクロム化反応については既報した。水溶性錯塩のみを生成するo,o'-ジオキシアゾ染料I,V,Xにおいて
染料I4-クロル-2-アミノフェノール→ クロモトロープ酸
染料V4 -ニトロ-2-アミノフェノール→ H 酸
染料X2-アミノフェノール-4-スルホン酸→ β-ナフトール
染料I,Vはその1:1錯塩の溶解度および2:1錯塩の酸加水分解度が大きいため, クロム化反応中, 常に1 : 1 錯塩と2:1錯塩が共存するが,染料Xは長時間のクロム化反応により,圧倒的に1:1錯塩が生成する。
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