エゾライチョウの繁殖生態について,北海道東部の十勝および釧路地方において,1983年と1984年に調査を行なった.また,両年に野外の巣から採卵した58卵と,飼育下で産卵した9卵合計67卵を用いて,人工ふ化および飼育に関する研究を行った.
(1)営巣環境は,針葉樹林,針広混交林,カラマツ人工林,トドマツ造林地やササ地などであり,環境選択の範囲が広かった.
(2)営巣期は,5月上旬から6月下旬で,1984年のふ化日は6月下旬の約10月間に集中していた.
(3)産卵数は,調査した11巣では4-9卵で,平均7卵であった.抱卵は雌だけが行い,巣立ちはふ化日の翌日であった.
(4)飼育下における番いの雌雄は,配偶期に特徴的な交尾前行動を行い,その後に交尾した.造巣は雌が1日で造った.また,補充産卵性を利用して21日間に14卵を得た.
(5)ふ化率は,ふ卵器で93%,チャボによる母鶏ふ化で71.4%で,抱卵日数は25日であった.
(6)飼育については,ふ化後5週齢までは25°Cの育雛ケージで飼育し,餌は粗蛋白質を13-19%に調整して与えた.ひなは,休息と活動を周期的に繰り返し,集団的な行動をとる傾向が認められた.ひなの発育にともなう形態変化は顕著であった.
(7)6週齢からは飼育舎に移し,5-8羽を1群として飼い,餌は粗蛋白質を13-15%に調整して与えた.この時期から羽つくろいや砂浴びなどを行い,行動に多様化が認められた.また,尻つつきが多発するようになった.
(8)16週齢から成鳥とし,2-3羽を1群とした.餌は粗蛋白質を非繁殖期には10%,繁殖期には15%以上に調整して与えた.この時期から雌雄の特徴も明瞭になり,しばしば,誇示行動,雌追い,囀りなど,繁殖期と同様の行動が認められた.
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