政治地域の形成過程を明確にするために,一例として明治行政村の成立事情を分析した.明治22年の町村合併は,主として国家の側からの財政的,政治的要請に基くものであつた.しかしその中央政府からの圧力に対応する仕方は,各地域において独自なものが見られたはずである.一例として熟田村をみると,その諸部落には,それらを合併に導く条件がそれぞれ固有に備わつていた.そこでまず開拓の過程,領主,用水,入会地等を検討して,合併の基礎的前提を明確にした.さらにこの上に明治以後の諸政策.すなわち大小区制,学区制の施行等が加つて,各部落に合併の態度を決定させる要因が作り出された.この合併は各部落上層の指導的農民の利益に反しない形で行われたものと予想されたが,箱森部落について合併の仕方を具体的に検討した結果,そのことを実証することができた.
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