日本放送協会(NHK)がその放送を受信する設備を設置した者と締結する受信契約について、契約法の観点からの問題点を整理した。
本稿では、特に、平成29年12月6日、受信設備を設置していたにもかかわらず受信契約を締結しない者に対してNHKが受信料の支払を求めた事案において、最高裁判所大法廷が下した判決(受信料訴訟大法廷判決)を採り上げた。その補足意見や反対意見では、契約法の観点から受信契約の問題点が言及されており、それらについて、これまでの主な判例や学説を踏まえ、若干の検討を加えた。
具体的には、①受信契約の契約主体、②その成立方法、③その成立時期及び受信料支払義務の始点並びに④受信料債権の消滅時効の起算点に関する問題点について検討した。
その結果、①受信契約は単位ごとに締結することを法律上明記し、その代表者に契約締結義務を課すなど、契約主体をより具体的に規定してはどうか、②受信契約締結に応じない受信設備設置者に対しては、立法趣旨、実際の運用、これまでの判例等を勘案すると、受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命じる判決の確定をもって契約成立とする受信料訴訟大法廷判決に判示される方法が一般的な方法ではないかと考えるが、ただし、③受信料の初回支払額を受信設備設置時から受信契約成立時までの受信料相当額として受信契約の成立時と受信料支払義務の始点が一致するようにしてはどうであろうか、④そうすることにより、それらの時期が異なる場合の消滅時効の起算点の問題も解消するのではなかろうか、との改善案等を提示した。
抄録全体を表示