重度失語症者のジェスチャー理解力とそのコミュニケーション上の意義を明らかにするため,重度失語症者12名および健常者12名を対象にジェスチャー理解テストおよび聴理解と読解に関する2つの言語理解テストを施行した.その結果,次のことが明らかになった.
(1) 重度失語症者は,健常者と比較し,ジェスチャー理解力と言語理解力に明らかな低下を示す.
(2) 失語症者に関し,ジェスチャーの理解障害は,言語の聴覚的理解障害と高い相関を示す.
(3) ジェスチャー理解に関する失語症者の誤りは,ジェスチャー自体のもっともらしさと関連が深い.
(4) 重度失語症者は,言語理解と同様に,ジェスチャー理解にも障害を受けているため,話し手側がことばのかわりにジェスチャーだけを用いて伝達しようとしてもあまりその効果は期待できない.一方,ジェスチャーを補助手段として用い,ことばと組み合わせて使うことにより,患者の理解が促進され,コミュニケーションをより円滑にする効果がある.
以上の結果について,臨床的観点より若干の考察を加えた.
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