現代化学の研究に際しては非常に多くの機器が使用されているが,その大部分は分析を目的とするものと思われる.分析化学を専門とする研究者は,これら化学および工業化学において使用されている機器についてはひととおり心得ておくべきであろう.電子顕微鏡もまた分析化学の目的に使用しうるものであり,分析化学研究者はその原理および応用に関する知識をひととおり修得する必要があろう.
電子顕微鏡については既に本誌にその概論が記述されており,さらに多くの専門書が刊行されている.本稿においては電子顕微鏡の原理とそれに加えて最近の進歩,さらに分析化学へ直接応用された例を述べてゆくことにする.
電子顕微鏡は単にレンズ系を応用して試料を拡大して観察するいわゆる顕微鏡であるのみならず,電子回折装置でもある.顕微鏡としては現在の電子顕微鏡は分解能が数オングストロームに達し,直接倍率10~20万倍となり,さらに電子回折装置としては径1ミクロン以下の微細な単結晶の回折像を得ることができ,また格子間隔の大きな結晶の研究に便利な高分解能回折像が得られる.
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