歯科治療に際して血圧測定が必要なケースは少なくない。しかし, 患者が厚着をしていると, マンシェットを捲くまでに時間がかかり血圧測定が煩わしくなる。そこで, 今回私達は指の基部で血圧測定を行うオムロン社製HEM-802F型デジタル自動血圧計を試用し, その精度測定すると共に歯科臨床への応用の可能性について検討した。
対象は当センター歯科を受診した患者44例と歯科衛生士学校の学生83例である。また, 指基部血圧計の測定精度を検討するためのコントロールとして上腕で血圧を測定する日本コーリン社製のBP-203型自動血圧計を用いた。
その結果, 患者群の上腕血圧と指基部血圧との間には, 収縮期圧, 拡張期圧とも座位および水平位において極めて良い相関が認められた (P<0.01) 。但し, 歯科衛生士学校の学生を対象にした測定では拡張期圧には相関が認められなかった。また, 患者群の指基部の収縮期圧は上腕と比べて座位では4.32mmHg低く, 水平位では0.66mmHg高かったが, いずれも差は小さかった。
以上より, HEM-802F型血圧計は心臓との位置関係に留意して測定すること。また, 指基部の血圧は生理的または病的な原因で上腕の血圧との間に差が生じうることを念頭におけば, 歯科臨床に十分活用できるものと考えられる。
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