比較的稀なヘルニアとして,高齢者にみられる閉鎖孔ヘルニアがある.われわれはその中でもさらに稀と考えられる病態を呈した3例を経験した. 1例目は,左大腿内側の筋間膿瘍にて発症した. 2例目は,左閉鎖孔ヘルニアの手術後, 10年目に同側の再発を起こした. 3例目は,汎発性腹膜炎で発症したため,緊急手術を要した症例であった. 3例ともに,閉鎖孔ヘルニアの症状としては特殊であり,術前診断,及び治療に難渋した.
閉鎖孔ヘルニアの診断として, i) まずその存在を疑う事, ii) 画像診断ではCT-scanが有用である事,また治療では, i) 閉鎖孔を,腹膜のみではなく,卵管等で被って補強する事,が重要であると考えられた.症例提示と,文献的考察を加えて報告する.
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