腸重積は小児に多く, その発生は偶発的(idiopathic)なものが多いが, 一方, 成人では発症の86%は内筒先進部に何らかの病変が認められるといわれている. その病変の内訳をみると, 良性の比較的大きなポリープによるものが36.4%, 悪性病変が27.3%, 転移性悪性腫瘍が4.5%の集計報告例がある. また, Nothnagelは腸管病変を伴わない, 限局性腸管痙攣によって発症し, 先進部は長期にわたり浮腫, 壊死を繰り返し, 炎症性巨大ポリープ様になる機序を報告している.
67歳男性で腹部膨満, 下血, 腹部腫瘤を訴え来院し, 結腸腫瘍の疑いのもとに種々の検査期間中, 急激に強い腹膜刺激症状を呈し, 腫瘍性結腸穿孔の疑いで緊急開腹術が施行された結腸重積症を経験した. 本例は摘出標本などを精査したところ, Nothnagelが指摘したまれな発症機序によるものと推測しえた.
一般に成人の結腸重積症は確定診断に難渋し, 他疾患と誤診する危険性が多く一般状態が重篤にならないうちに確定診断を下し, 適切な治療を施行することが肝要である.
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