花宗川における春水通水慣行は非灌漑期の春先において, 矢部川から分水する花宗川を瀬替して通水し, クリークに用水を貯水する慣行である。この通水期間は「四月上旬から八十八夜までの一ヵ月間」において実施されていたが, 現在では約20日間遅れで継続されている。このような慣行に関し, 旧通水期間と瀬替部分の横断水路敷設を視点に, 慣行の成立過程を検討した。その結果, 旧藩時代の初期に田中吉政氏の農業振興対策の一つである麦栽培の導入・奨励が契機となって, 瀬替水路は開削され春水通水慣行が成立したことを明らかにした。
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