20年ほど前から北九州市内の社寺林などの古木にオオバヤドリギの着生による衰弱・枯死被害が目立ち始めたので,1996年に市全域で調査を行った.その結果本種の市域での分布には,南西の福智山と北東の足立山の二つの山系の麓に集中して平地の人口密集地には全く見られず,また着生木の見られる社寺林は互いに凡そ100 m以上離れている,という二つの傾向が認められた.本種のこのような分布の特徴は,鳥散布型の繁殖生態と散布者の行動,多様な樹種を宿主とする多犯性,宿主上での生長の仕方やフェロノジーなどについての筆者自身の観察結果から,照葉樹林帯に属する本市々域内での開発の時期及び程度と密接な関係があると考えられた.ただ何故近年爆発的に被害が増えたかを説明するには資料が不十分である.
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