正
八角形
加工物の一つの角を取り出して,加工物が正
八角形
から円になってゆく過程を立体的に示したのが図10である.図10は研削速度が1880m/min,切込み速度が10μm/sec,コンタクトホイルの硬度がDro 40で研削した加工物を形状測定装置で研削時間30秒ごとに測定した結果である.円孤の部分が研削面であり,研削時間の経過とともに円孤が長くなることから研削時間の経過とともに研削面が長くなり,研削時間が300秒になると加工物の全周面が研削されることがわかる.図7,図8に示された実測による研削時間と研削深さ,単位時間当りの研削深さとの関係は図3,図4に示された理論計算から求められた研削時間と研削深さ,単位時間当りの研削深さとの関係とよく一致している.研削速度を1880m/min,切込み速度を5μm/secとして研削加工を行なった実験値による研削時間と単位時間当りの研削深さとの関係を示した図8の曲線から
Kの値を求めると,Dro 40とDro 80のコンタクトホイルを使用した場合には
Kの値が0.04~0.05の範囲にあると考えられる.また,コンタクトホイルの硬いものを使用して研削した場合に
Kの値が大きくなる.この
Kの値は円筒形加工物を円筒研削した場合とほぼ同じである.このことから,取りしろが変動する加工物も取りしろの変動がない円筒形加工物と同じように円筒研削ができ,円筒形加工物を円筒研削したときに求められる
Kの値を用いて,正
八角形
加工物が円筒研削されて円形になる過程を理論計算することができた.そこで正
八角形
加工物が円形になるサイクルタイムを理論計算から求めた.
加工物の最後に研削される部分(図1のB点)における単位時間当りの研削深さについて考えると,(10)式でθ=0とおけば,
ve=
vs[1-exp{-
K(
t-
R0/
vs×0.0761)}](13)となる.これを一次おくれの要素とみなして,正
八角形
加工物が円形になるサイクルタイムを時定数の考え方で表わす.
Tを時定数とし,(13)式で
ve=0.63
vs,
t=
Tとすると,
T=0.994/
K+0.0761×
R0/
vsとなる.
(14)式において
vs=5,10,20,40μm/secとして係数
Kと時定数丁との関係を示したのが図11である.図11より切込み速度が増すとサイクルタイムは短かくなり,特に切込み速度が5~10μm/secと比較的低速度のときにその効果は大きく現われる.今回の実験範囲は
vs=5,10μm/sec,
K=0.04~0.05であり,この範囲ではコンタクトホイルの硬さがサイクルタイムに及ぼす影響がほとんど見られない.
また,回式の0.0761×
R0は加工物の形状によって決まる値で山の高さを表わしており,加工物が正
八角形
以外の形状であるときにも加工物の山の高さを知ることができれば,(14)式により作業のサイクルタイムが計算できる.
なお,理論計算と実験結果をまとめるとっぎのようになる.
(1)取りしろが変動する加工物を研削するときも,円形加工物を研削するときと同じように研削でき,工具と加工物との問に飛び跳ねなどの現象が見られない.
(2)本研究でたてた理論式によって計算した結果と実験結果とがよく一致しており,この実験では砥粒先端角,被削材の降伏応力などによって決まる係数
KGとコンタクトホイルのばね定数
Kwとの積である係数Kが0.04~0.05の範囲にあった.これは円筒形加工物を研摩ベルトによって円筒研削したときの値とほぼ等しくなった.また理論式により作業のサイクルタイムが計算できた.
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