本研究は,3ヘドニックトーン尺度(快さ,美しさ,好ましさ)と面白さおよび楽しさとの美的評価間の異質性を,理解度評定および画像の抽象化処理による作品の具象性の度合いの2種の理解度指標から検討した。実験では,21名の美術大学生に3点の
具象絵画
と3点の抽象絵画,およびそれらを4段階にモザイク化した計30画像の,5美的評価,理解度,および3色彩感情の9尺度の評定を求めた。その結果として,評定および作品の具象性の双方の理解度指標において,ヘドニックトーン尺度群は作品理解度にきわめて規定される傾向が認められた。一方で,面白さに関しては,総体的傾向としては理解度評定とある程度の負の関係を示したが,作品の具象性の程度との関係は不明瞭であった。また,楽しさは評定においても,刺激操作においても,作品理解度との関係は不明瞭であった。これらから,ヘドニックトーン以外の美的評価の代表とみなせる面白さおよび楽しさの,作品理解度の点からのヘドニックトーンとの異質性が示唆された。
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