【目的】
内側広筋
は膝関節の保護や支持性,膝蓋骨の外側偏位を防止する役割があるとされている.しかし
内側広筋
は筋萎縮を生じやすく,回復しにくい筋といわれている.これに対し,大内転筋の筋活動を伴う股関節内転運動を行なうことで,
内側広筋
の筋活動を高めることができるとされている.
そこで本研究では,スクワット動作においても大内転筋の筋活動を伴う股関節内転運動をすることで,
内側広筋
の筋活動を高めることができるかを検討することを目的とした.
【方法】
対象者は健常男性7名とし,筋電図計はメデイエリアサポート社製のKm-818MTを使用した.測定肢は利き足とし,被験筋は
内側広筋
・外側広筋・大腿直筋・大内転筋の4つの筋とした.測定肢位は,スクワット肢位とし,この肢位を3秒間保つスクワット動作と,スクワット肢位にて両膝関節でボールを3秒間挟む動作(以下ボール動作)を行い,各動作の積分値を算出した.また徒手筋力検査の肢位にて各筋の最大随意収縮(以下MVC)の積分値を算出した.各筋のMVCの積分値を100%とし,各動作での各筋の積分値で除した%MVCを算出し,記録した.
【結果】
1.
内側広筋
と大内転筋の相関はr=0.45となり正の相関を示した.(p<0.05)
2.
内側広筋
と大腿直筋の相関はr=0.05となりほとんど相関を示さなかった.(p<0.05)
3.ボール動作における
内側広筋
の%MVCがスクワット動作より優位に高値を示した.(p<0.05)
【考察】
内側広筋
と大内転筋は正の相関を示し,大内転筋の筋活動が高まることで,
内側広筋
の筋活動が高まるということがわかった.河上らの報告によると
内側広筋
と大内転筋は筋連結をしている.そのため大内転筋が収縮することにより,
内側広筋
が伸張されることが考えられる.Edmanらの研究によると等尺性収縮中のカエルの筋線維に伸張を与え,その長さに保持すると,伸張前の張力より大きな張力が維持されることを示している.このことを「伸張による収縮増強効果」と呼んでいる.
以上のことより,大内転筋が収縮することで,筋連結により
内側広筋
は伸張され,
内側広筋
には「伸張による収縮増強効果」が生じた.この効果により
内側広筋
の筋活動が高まり,結果として
内側広筋
と大内転筋には正の相関を示したものと考えた.
河上らの報告による
内側広筋
と大腿直筋にも筋連結が見られる.しかし
内側広筋
と大腿直筋はほとんど相関を示さなかった.このことから,ただ筋連結をしているだけでは筋活動を高めることはできず,筋連結している筋同士の筋線維方向が一致していることが重要だと考えられる.
最後に,ボール動作における
内側広筋
の%MVCがスクワット動作より優位に高値を示したことから,立位動作においても大内転筋の筋活動を伴う股関節内転運動をすることで,
内側広筋
の筋活動を高めることが可能ということがわかった.
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