近代物理学から現代物理学への移行過程と,20世紀現代物理学における数学的自然観について考察する。現代科学の数学的自然観は当然ながら近代科学の数学的自然観を含むが,それとは異なる性格をもち,そこにはさらに深い自然観がみられる。近代科学の論理の骨格をなす「絶対概念」は,現代科学への移行過程で「相対概念」で置き換えられ,その特徴は数学的自然観にも現れている。近代物理学は関数や微積分を用いた方程式で自然則を記述したが,現代物理学ではそれらの式の変換性と不変性に着目することにより,さらに深く自然の仕組みを認識するに至った。ある変換のもとでの不変性は物理的対称性や保存則と結び付いており,また,変換に対する不変性は理論の客観性と普遍性を保証する。したがって,変換が広いほど客観性を増し,多くの不変性を見いだすことは物理学から人為的要素を排除することにもつながることを指摘する。最後に,相対論や量子力学は普遍定数c,hをパラメーターとして含むが,c,hの数値を別の値に変えることは別の宇宙での法則とみなせるから,それらは超宇宙法則と解釈できるだろう。
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