開発と環境保全とをめぐる社会的コンフリクトには, 新幹線・高速道路・原子力発電所等の建設紛争を始め, さまざまなタイプのコンフリクトがある.本研究では, これらの中でも, 水環境の開発と管理をあぐって流域社会で発生している社会的コンフリクトを「流域型コンフリクト」という一般的な概念としてとらえ, 琵琶湖・蛇砂川流域を事例として, コンフリクトの順機能性を評価する立場から, 動学的な構造分析を行なった.
結論として, 流域型コンフリクトは, (1) 他の施設立地型コンフリクトに比較して, 外部性・相互依存性が高いという牲質をもっている為, その解決には, 関係主体が, 流域共同体意識を持っ必要がある. (2) その特質から, 府県レベルや旧村レベル等の異なるレベルに, 次々に派生する可能性があり, 水環境の開発と管理を目的とする計画・事業過程においては, 流域を単位とした環境アセスメント, 情報公開, 住民参加を含む合意形成システムの確立が望まれる.
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