本稿はタイ北部の農村を事例に、住民の林地への依存度が高い状態を前提としていた参加型森林管理が、農村社会の変化によってどのような問題に直面しているかを明らかにし、その解決策を提示する。住民の林地に対する「依存度」と管理における住民の「自律性」に着目し、国有林内に森林と農地の両方が存在するという実態を考慮して分析した。その結果、森林については、住民の管理に対するインセンティブが低いため、管理が行き届かなくなることによる生態的サービスの劣化の問題が明らかになった。農地については、地方自治体が住民間で土地の利用権を移譲できる証書(コミュニティ証書)を発行したことによって土地の資産価値が高まったため、耕作されていない土地を地域の資源として活用できていない状況になっていた。今後は、住民を一括りにするのではなく、管理への参加度合いに応じてサービスを享受できる林地管理制度を目指していくことが重要である。
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