1884年以降28カ年の冷害年について7月気温, 8月気温, 7, 8月平均気温の平年偏差の地域分布を求め, 平年偏差が-1.0℃以下になる低温地域の大きさで冷害年を分類した。その結果, 冷害年の低温分布とその出現頻度に関して以下のような特徴が認められた。
(1)多くの冷害年の低温分布は高緯度地方から低緯度地方へ連続して拡がり, 低緯度地方けが低温を示すのは例外的である。低温強度 (平年偏差の大きさ) は高緯度地方ほど大きい傾向を示すが, 北海道, 東北地方では太平洋側の方が大きい年と日本海側の方が大きい年とがある。西日本地方ではつねに日本海側の低温強度の方が大きい。
(2) 各冷害年の低温地域の範囲を緯度区分で表わし,
A, A~B, A~C, A~D, A~E, A~F, A~G型の7類型に分け, それらの出現頻度を調べた。低温分布地域がほとんど北海道に限られる北海道型(
A型,
A~B型)の出現は30%弱, 東日本型 (
A-C型,
A-D型)が20%前後, 低温分布が西日本にも及ぶ全国型(
A-E型,
A-F型,
A-G型)が30-40%であることがわかった。低緯度地方ほど低温出現頻度は少ないが, 緯度による変化傾向からみて北海道は明らかに出現頻度が多く, 関東以南は特徴的に少ない。
(3) 低温範囲が東日本地域内に限られる
A型から
A-D型の場合は, 北冷西暑の第2種型
冷夏
によるものが多く, 混合型もあると考えられた。しかし低温範囲が西日本あるいは全国的に拡がる
A-E型から
A-G型の場合はオホーツク海高気圧による第1種型
冷夏
に由来するものが多く, 一部は混合型によるものがあると考えられた。
(4)低温分布が西日本に及ぶような規模の大きい冷害年は, 比較的頻繁に現われる期間とほとんど現われない期間が交互にあり, その間にある種の規則的変化があることが認められた。このような冷害年の出現は気温の永年変化と関係していると考えられた。1976年以降は出現した冷害年の低温分布型と気温の永年変化の特徴からみて, 規模の大きい低温年が現われやすい期間の特徴を示していることがわかった。
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