本研究では,自然界の炭素循環において重要な役割を担う
分解者
について,生徒の理解に課題があると考え,調査を行った.麻柄ら(2006)は,学習者に身につけさせたい正しい概念を「ル(rule)」とし,その反例である誤った概念を「ル・バー(
ru)」とした
1).さらに,伏見(1992)は,金属概念の正しい理解に向け,ル・バーとは抵触しない銅の事例に即して金属概念のルを導入し,それをル・バーと抵触するカルシウムの事例に対しても適用可能にしていくようなストラテジー,すなわち,ル・バー懐柔型ストラテジーの有用性を示した
2).金属概念と同様に,
分解者
概念においても,外延の縮小過剰,内包の部分欠如や誤ったルールの保持が考えられるため,本研究でも,ル・バー懐柔型ストラテジーを用いたい.しかしながら,
分解者
概念におけるル・バーとは抵触しない事例(典型事例)やル・バーと抵触する事例(境界事例)が何なのかを十分な実態把握がなされていないため,大学生に対して
分解者
概念に関する認識調査を行った.調査結果から,菌類・細菌類のみが
分解者
であると考えている者や,生産者でもなく消費者でもない生物を
分解者
とする者がいることが明らかになった.また,枯草菌は,典型事例,ナマコは,境界事例として活用できる見通しも得られたため,ル・バー懐柔型ストラテジーを用いた学習の在り方を模索したい.
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