(1)以上の実験を通じて伝送ケーブルの始端および終端は,整合してもしなくても観測波形に差異は認められなかつた。使用ケーブルの遅延時間は約7.5×10
-3[μs](計算)であり,放電回路のインダクタンスおよび抵抗はそれぞれ約1[μH]および約0.01[Ω]+分流器抵抗値であつたから,2.1の考察に準じて,もつともなことである。観測装置増巾器の特性(1号器:周波数特性0~15[MC]-2.5db±1.0db,矩形波立ち上がり時間25[mμs];2号器:0~15[MC]-3db,24[mμs]-いずれもカタログ掲載値)も満足すべぎものであつたと考える。
大地電位の浮動やまた電源側からの妨害電圧の侵入については,ことさらには検討しなかつたが,短絡したケーブル入力端を放電回路から数十[cm]離すと,いずれの場合も増幅器最大感度で零線の変動は認められなかつた。
(2)伝送ケーブルに対する誘導は,電流変化の急峻な図18を得た実験を除いて,いずれの揚合も無視できる程度であつたが,分流器の抵抗体と電圧引き出し線とで形造るル-プの受ける誘導電圧は,ル-プの囲む面積が大きく,かつ,しやへいが施されていないとき無視できないことがある。
(3)分流器の残留インダクタンスによる影響は,実験を行なつた範囲では,式(5)で与えられる。このことはまた,短間隙を含むLCR直列回路の振動放電電流は式(1)の形で大差なく示されると考えてよい1根拠を与えるものである。
(4)分流器の残留インダクタンスによる電圧降下および外部からの電磁誘導電圧は,電流の微分波形として信号電圧に重畳し,電流の立ち上がり点および零点で,観測波形に跳躍を生ぜしめるが,短間隙振動ア-ク放電電流は一般に図19に見るように,その零点を境にして時間軸に対する勾配が異なるから図4のB点に示すような突起を残す。しかし放電開始電圧が高くて放電間隙の逆起電力が無視できるときは,この電流の折れ曲がりは,きわめて小さくなり,したがつて突起は現われない。(図17(b)の上図参照)
(5)アーク維持電流値は,電流の零点付近を増幅すれば観測できるが,振動電流の揚合は零点付近の勾配が大きいから,分流器の残留インダクタンスや誘導妨害については,特に留意しなければならぬ。非振動電流の場合の観測波形を図20に示す。
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