同一地域集団内における血圧値と尿中ナトリウム (Na) およびカリウム (K) 排泄量の関連を重回帰分析によって検討した。40~69歳の中年女子7,441名のスポット尿を濾紙法を用いて, 全県の169市町村から収集した。予測式を用いて, スポット尿のNa, Kおよびクレアチニン (Cr) 濃度から24時間尿中のNa, K排泄量を推定した。被検者の年齢, 身長, 体重, 最高および最低血圧値を郵送により入手した。最高および最低血圧値を目的変数とし, 年齢, 身長, 体重, NaおよびK排泄量を説明変数として重回帰分析を行った。主な結果は以下の通りであった。
1) 全国および地域ブロック別では, 有意の場合, 血圧値とNa問に正の関連, 血圧値とK間に負の関連が一貫して見られた。
2) 県単位の観察では, 有意の場合, 血圧値とNa問に一貫した正の関連, K間に3例外 (正の関連) を除き, 負の関連が見られた。
3) 市町村での観察では, 有意の場合, 多くは血圧値とNa間に正の関連, K間に負の関連が見られた。一方, とくに近畿地方において, 血圧値とNa問に負の関連, 血圧値とK間に正の関連が見られる集団が集積する傾向が認められた。
4) 市町村における血圧値とNaおよびKの関連の有意性 (なし, 正, 負) の分布は, 市部と町村部で違いは見られなかった。
本研究では, 市町村という同一地域集団内においても, 血圧値と尿中Na問に正の関連, 血圧値と尿中K間に負の関連を示す集団が見られたことから, Naは高血圧発生の危険要因として作用し, Kは逆に有益なあるいは保護的な要因として作用している可能性が示唆された。
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