北米産の外来種であるウチダザリガニ(Pacifastacus leuiusculus)は,北海道で分布域を急速に拡大している.本種は,日本固有種で絶滅危惧種のニホンザリガニなどの在来生物に対し,深刻な悪影響を及ぼすことが懸念されており,2006年に特定外来生物に指定された.ウチダザリガニが新たに定着し続ける要因は人為的放流にあると考えられており,飼育や野外での採集において外来種と接する機会の多い児童においても,このような放流を行っている可能性が高いとこれまで指摘されてきた.本研究では,ウチダザリガニに対する児童の認識の詳細を明らかにするため,小学校4年生141人を対象としたアンケート調査を実施した.また,児童に対して正しい知識を指導する立場の大人によるウチダザリガニに対する認識についても明らかにするため,ウチダザリガニが定着した河川周辺に居住する大人を中心とした幅広い年齢層100人を対象とする同様のアンケート調査も行い,児童の結果と比較した.
調査の結果,児童・大人ともに,ウチダザリガニについての知識が極めて不十分なことが明らかとなり,ニホンザリガニやアメリカザリガニと混同している場合も多かった.また,「飼育が面倒になったらどうするか?」という質問に対し,「他の川や湖沼に放流する」との回答も多く,このような放流がウチダザリガニの新たな定着が後を絶たない原因になっていると考えられた.今後は,学校および地域における生物教育や環境教育を通じて,ウチダザリガニに関する正しい知識を早急に啓発していく必要がある.
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