北海道北東部鱒浦沿岸域に生息するワカサギの食性について胃内容物調査を実施した。沿岸海域で採捕されたワカサギは5~8月までは体長80mmを越える大型のものであったが,9~11月になると体長50mm以下の小型のものとなった。この違いは年級差と考えられた。これらのワカサギの胃内容物および食性の変化について以下の結果が得られた。
1)ワカサギの胃内容物からは5門30種の餌生物が同定された。最も種類数の多かったものは甲殻類で出現種類数の約80%を占めた。中でも浮遊性のコペポーダ,
Paracalanus parvus,Eurytemora herdmani,Tortanus foycipatusが多かった。
P.parvusは9~10月のみに優占的に出現し,
E.heydmaniは5~8月特に7月に優占して出現した。ほかにも端脚類・クーマ類など底生性の甲殻類も多く見いだされ,甲殻類を好んで食する傾向があると思われた。
2)胃内容生物をその食性によって5群に分け組成比率を比較すると,5~6月ではデトリタス食者や肉食者など大型の底生動物が多くなるが,7月以降はプランクトン食者が圧倒的に多くなる傾向があった。これはオホーツク海の動物プランクトン量の季節変化に依存していると考えられた。
3)ワカサギの体長が小さいときは小型の餌のみを捕食するが,体長が大きくなると大型の餌も捕食できるようになることが明らかになった。しかしながら,胃中優占種の体サイズはワカサギ体長の大小に係わらず1~5mmの範囲であり,ワカサギの大型個体は大型の餌のみを選択的に捕食しているわけではなく,環境中に多いと思われる餌生物を中心に捕食していると考えられた。
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