気管腕頭動脈瘻は,気管切開及び喉頭気管分離術後の最も重篤な合併症として知られている。今回我々は重症心身障害児に喉頭気管分離術を施行し,術後に気管腕頭動脈瘻を形成したものの救命し得た1例を経験したので報告する。症例は13歳女児。脳性麻痺,重度精神遅滞,難治性てんかん等に対して当院小児科外来を通院していた。原疾患に伴う呼吸状態の悪化により入院となり,経口挿管で人工呼吸器管理が開始されたが,抜管困難な状態が続いたため気管切開を施行。その後,誤嚥による気管の攣縮と呼吸状態の悪化の解決等のため,喉頭気管分離術を施行した。手術より2か月後にカニューレ交換を施行した際,気管内より大量の出血を生じた。換気チューブのカフを過膨張し一時的止血を得た。気管腕頭動脈瘻と診断し腕頭動脈離断術,上行大動脈-鎖骨下動脈バイパス術,気管瘻閉鎖術を施行。術後,脳の虚血は見られず,気管の状態も安定したため自宅退院となった。
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