サイレージの変敗を誘発する微生物種を究明することに関連して,変敗防止剤添加が,微生物の消長に及ぼす影響と添加効果の関係を検討する目的で,5種類のとうもろこしサイレージを材料とし,各々に対照区とプロピオン酸をサイロ開封時に,100mmol/kg(0.74%)添加する区を設けて変敗実験を行ない,以下の結果を得た.1) 対照区サイレージは,すべて変敗した.しかし,プロピオン酸の添加により,3例では変敗が防止された.2) サイロ開封時には,Saccharomyces exiguusが優勢種として分布する場合が多かった,3) 対照区の変敗は,主因菌が,Pichia membranaefaciensと考えられるもの3例,S. exiguusと考えられるもの1例,Candida kruseiと考えられるもの1例であった.また,Penicillium属,および,Monascus属の糸状菌も変敗に関与すると推察された.4) プロピオン酸添加区では,S. exiguusは減少した.一方,P. membranaefaciensは増殖し,本菌種が,プロピオン酸に対し,抵抗性を有することが認められ,かつ,本剤の添加にもかかわらず,変敗の生起したサイレージ2例では,変敗の主因菌は,いずれも本菌種と考えられた.5) 変敗の生起したサイレージにおいては,その水抽出液の浸透圧が,顕著に低下することが認められた.
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