本研究では, 岩手県一関市奥玉地区において開催されたしつけ道場で若者が学んでいた内容を, 1956 (昭和31) 年に開催された道場での講義本をもとに具体的に解明した. さらに, 17年後の1973 (昭和48) 年の道場での講義本と比較し, 内容の比較を行った. その結果, 道場は婚礼儀礼を学ぶことで, 地域の伝統と文化を学び継承する場であったと分かった. 1956 (昭和31) 年講義本の口上からは, これまでにない長持受け渡しの儀式, 打板の儀式, 小座入り式等の儀式に関する詳細な内容の知見が得られた. また, 口上には, 御座いますあるいは申上げますなどが多用され丁重な言い回しが用いられ, 仲介となる御取持を立てて物事を進めていた. なお, 17年後に道場の開催場所が公民館になったこと, 伝承内容が削減され簡略化された背景には, 戦後の公民館制度の設置, 生活改善の推進, 交通事情の進展などの社会の変化があると推測された.
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