本研究では, 2事例を通して, 障害者の職場でのいじめ問題について考察している。まず, いじめから派生する問題を, (1) QWL, (2) 職場定着, (3) メンタルヘルス, (4) 社会への統合, (5) 人権の5つの視点から整理し, いじめが障害者にもたらす影響を分析する。さらに, いじめの発生要因について分析し, これには2つのタイプがあると考える。一つは障害者自身の作業能力や対人関係に問題があり, それに対し適切な職場環境が整備できずに発生するものであり, もう一つはいじめる側の問題から発生するものである。前者については, 障害者本人の職業能力と障害認識・会社の要求水準から8類型に分けて職場適応状態を整理しながら, いじめの予防と対策について考察する。後者についての対策は今後の課題としながら, いじめる側の問題分析や学校教育・社会教育の問題, 啓発の必要性を提起している。
抄録全体を表示