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クエリ検索: "名誉の殺人"
9件中 1-9の結果を表示しています
  • エジプト西部砂漠ベドウィンの血讐と名誉殺人を事例に
    赤堀 雅幸
    文化人類学
    2017年 82 巻 3 号 367-385
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/05/16
    ジャーナル フリー

    女性に対する暴力が、「名誉」の概念の下に振るわれる諸事例に注目した特集中にあって、本稿がまず指摘するのはしかし、名誉に基づく暴力の行使は「女性」に対するものだけではない点である。地中海周辺域において名誉と暴力との関係に注目した人類学分野の研究が過去に注目してきたのは、むしろ血讐といった、主として男性によって集団間で展開される暴力行為であった。本稿でも、著者が1980年代末から断続的に調査を行っているエジプト西部砂漠のベドウィンについて収集した情報を主たる事例として、前半部では血讐をめぐり名誉が論じられる文脈を取り上げ、「名誉に基づく暴力」の概念を拡張して捉えることをまず提案する。同時に、暴力の行使が名誉に基づいて正当化されるだけではなく、暴力の抑止や和解もまた、名誉に基づいて説明されることを明らかにし、「名誉に基づく暴力」の概念を見直す。

    後半部では、そのようにして拡張した「名誉によって正当化される暴力」の枠組みの中で、女性の性的不品行を契機に発動される暴力が、血讐などとは異なる、別個の種類の事象として設定しうるものであるかを、同じく西部砂漠ベドウィンの事例に則して検証する。注目されるのは、男性の調査者がベドウィンの男性から聞き取りを行うに際して、血讐については誇らしいことがらとして積極的に語るのに対して、名誉殺人について語ることにはある種の気まずさを伴う点である。そうした気まずさは、女性の性的不品行が、集団による女性のセクシュアリティの管理の失敗という、他集団との関係において語ることのできない事象であることと深く関わっている。

    これらの議論を通して、本稿は「名誉に基づく暴力」の概念をより大きな研究対象として設定し、その中で名誉が暴力の行使を正当化するだけではなく、暴力について語る際の汎用的なイディオムであることを指摘し、次いで女性の性的不品行に対して発動される暴力が名誉の増進をめぐる集団間の公的な競争ではなく、集団内で隠蔽されるべき名誉の喪失として、血讐などとは区別されると結論づける。

  • 2000年代のエジプトを事例として
    嶺崎 寛子
    文化人類学
    2017年 82 巻 3 号 346-366
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/05/16
    ジャーナル フリー

    本稿の目的はどのような条件下で名誉に基づく暴力が起きるのかを、特に性的逸脱行為(以下、逸脱行為)と、その露見という過程に注目して検討することである。2000年代エジプトを対象とし、主な資料として宗教電話相談(相談2,050件)の質問と回答(ファトワー)を用いる。事例の検討を通じ、逸脱行為と名誉に基づく暴力とは直ちにはつながらないことを明らかにしたい。逸脱行為は私的領域で、主に女性たちの間で知られているだけの間は名誉とは結びつかない。しかし男性の知るところとなると、それは醜聞となり、名誉問題化する。逸脱行為自体ではなく、その共同体への露見こそが暴力の誘因となる。

    同じ未婚女性の妊娠でも、その影響は事例によってかなり異なる。逸脱行為があっても、露見を防ぐことで名誉を守った事例はいくつも観察された。露見を誘発する条件、露見に対し脆弱性を持つ人の特徴などを検討してみると、名誉を守るためには複数の手段があり、恥や屈辱に対する脆弱性と、加害者の社会関係資本の多寡には連関が見られることがわかる。

    名誉に基づく暴力は、男性が自分の名誉が損なわれることで受ける恥辱・屈辱を雪ぐことを目的とするため、共同体のまなざしを必要とする。同時に名誉に基づく暴力は、女性を「貞淑な女性」と「ふしだらな女性」へと分断する、社会のジェンダー秩序の根底を支える構造の一部でもある。それは性規範を侵犯した、「ふしだらな女性」への懲罰的暴力である。そして遡及的な被害者非難により、醜聞を出した家の女性たちは皆、「ふしだらな女性」に転落させられる。一見矛盾するようだが、家長たる男性にとっては、この女性を二分し一方的に振り分け定義する根源的な暴力、この抗いがたい暴力に抗うためにこそ、名誉に基づく暴力はある。主観的には加害者は、名誉に基づく暴力によって、残された他の女性家族成員を、「ふしだらな女性」へとカテゴライズする根源的な暴力から救おうとしているのである。

  • イスタンブルの移住者社会の日常生活をめぐって
    村上 薫
    文化人類学
    2017年 82 巻 3 号 328-345
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/05/16
    ジャーナル フリー

    名誉(ナームス)に基づく暴力をめぐり、トルコの公論はふたつの批判的議論を提示してきた。ひとつは、国際的な名誉殺人への関心の高まりを背景として名誉殺人を因習殺人と名付けるものである。名誉殺人を東部のクルド系住民の後進性と結びつけるこの言説は、名誉殺人を特定の集団内で不可避的に起きる問題として他者化した。もうひとつは、欧米のフェミニズム理論を背景として、暴力の原因を家父長制に求めるものである。名誉殺人を含む女性への暴力は、普遍的で非歴史的な男性支配の制度としての家父長制によると説明される。前者では名誉は特定の地域や集団の因習に読み替えられ、後者では名誉は家父長制に還元される結果、なぜ名誉が暴力を正当化するのか、掘り下げて考察することができない。

    本稿は、名誉を一方で特定のエスニック集団に本質化された後進性との関係において、他方で家父長制との関係において、一元的に意味づける議論を離れ、人々の名誉の解釈と実践に焦点を当てることにより、暴力が発動する機序を地域社会の日常的関係のなかで理解しようとするものである。イスタンブルの移住者社会の事例に即した議論を通して、本稿では都市における移住者の周縁化、失業の増加と貧困化、あるいは女性の権利言説の高まりといった、グローバル化がつくりだす今日的状況において、名誉の解釈をめぐって駆け引きが可能な状況が生まれ、新たな暴力が誘発されていることを示す。名誉の解釈とルールが流動化し、一律でなくなる状況ではまた、暴力が誘発されるとともに、暴力に対抗する新たな契機も生み出されることを指摘する。

  • -“競争的な社会”における子どもの状況に着目して-
    野井 真吾
    日本教育保健学会年報
    2021年 28 巻 3-15
    発行日: 2021/03/06
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー
  • 岩崎 真紀
    宗教研究
    2015年 89 巻 3 号 608-614
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2017/07/14
    ジャーナル フリー
  • 佐々木 啓
    宗教研究
    2015年 89 巻 3 号 614-621
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2017/07/14
    ジャーナル フリー
  • 中澤 智惠
    子ども社会研究
    2008年 14 巻 173-181
    発行日: 2008/06/29
    公開日: 2023/03/21
    ジャーナル オープンアクセス
  • 有満 麻美子
    立教女学院短期大学紀要
    2013年 45 巻 1-14
    発行日: 2013年
    公開日: 2017/09/15
    研究報告書・技術報告書 フリー
  • ―国連報告書の抄訳―
    国際女性
    2005年 19 巻 19 号 23-52
    発行日: 2005/12/15
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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