(目的) コンピューターを利用した振戦の定量的方法を用いて, 生理的振戦の
周波数
, 振幅を定量的に評価, 分析を行い, その特徴を示すことで病的振戦との鑑別の基礎ならびにマイクロサージャリー医の適性判断の参考にすることである. (対象) 健常人340例 (男性87例, 女性253例, 3-86歳, 平均年齢43.3歳±20.4歳である) . (方法) 両上肢前方挙上, 手指伸展位にて, 示指先端にMV pick up装着し, その出力を30秒間, アンプ, フィルター通し, シグナルプロセッサー7T08にてフーリエ変換を行い, パワースペクトルをブラウン管上に描記し, ポラロイドカメラにて記録し,
周波数
, パワー (振幅の2乗) の分析を行った. (結果) 1)
周波数
帯域パターン (パワースペクトル) :
周波数
帯域パターンは, 7型に分類できた.340例中著明なピークを持ち固有
周波数
として認められた例は, 157例 (46.1%) であった.固有
周波数
を認める可能性のない型 (VI, 田型) もあり22.3%を占めた.2) 固有
周波数
, パワーと年齢: 年齢 (X) と固有
周波数
(Y) は, 有意の負の相関を示した (r=-0.616, p<0.001, Y=11.3198-0.0428X) .平均
周波数
9.469±1.418Hz (5.953-12.492Hz) .年齢別では, 固有
周波数
を認めた頻度は, 0-9歳に最も低く, 22%であった.年齢とパワーには, 有意の相関を認めなかった.3) 振戦の日差, 日内変動:
周波数
の日差, 日内変動は少なく,
周波数
帯域パターンにも変化は認められなかった.パワーは, 日差, 日内変動が認められなかった. (結論) 1) 健常人においては, 特別の固有
周波数を認める群と全く固有周波数
を認めない群に大別でき, 健常人すべてに固有
周波数
をもつ生理的振戦を認めるものではない.2) 固有
周波数
をもつ群においては, その
周波数
は, 加齢とともに減少を示す.3) 個人における
周波数
帯域パターンは, ほとんど一定で, 日差日内変動は示さない.
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