2004年10月-2005年9月の間に全国12施設において, 下気道感染症患者319例から採取された検体を対象とし, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性および患者背景などを検討した。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 原因菌と推定された細菌383株のうち381株について薬剤感受性を測定した。分離菌の内訳は
Staphylococous aureus 87株,
Streptococcus pneumoniae 80株,
Haemophilus influenzae 78株,
Pseudomonas aeruginosa (nonmucoid株) 35株,
P. aeruginosa (mucoid株) 9株,
Klebsiella pneumoniae 15株,
Moraxellasubgenus Branhamella catarrhalis 30株などであった。
S. aureus 87株のうち, Oxacillin (MPIPC) のMICが2μg/mL以下の株 (Methicillin-sensitive
S.aureus: MSSA) およびOxacillinのMICが4μg/mL以上の株 (Methicillin-resistant
S. aureus: MRSA) は, それぞれ40株 (46.0%) および47株 (54.0%) であった。MSSAに対しては, Imipenem (IPM) の抗菌力が最も強く, 0.063μg/mLで全菌株の発育を阻止した。MRSAに対しては, Vancomycinの抗菌力が最も強く, 1μg/mLで全菌株の発育を阻止した。Arbekacin (ABK) の抗菌力も良好で, そのMIC
90は2μg/mLであった。
S. pneuoniaeに対する抗菌力はカルバペネム系抗菌薬が最も強く, 0.25-0.5μg/mLで全菌株の発育を阻止した。Cefbzopran (CZOP), Cefbtaxime (CTX), Cefpirome (CPR), Cefditoren (CDTR) の抗菌力も比較的良好で, そのMICは≤1μg/mLであった。これに対して, ABK, Erythromycin (EM), Clindamycin (CLDM) では, 高度耐性株 (MIC: ≥128μg/mL) が, それぞれ2株 (2.5%), 30株 (375%), 31株 (38.8%) 検出された。H.influenzaeに対する抗菌力はLevofloxacin (LVFX) が最も強く, 0.125μg/mLで全菌株の発育を阻止した。ムコイド産生
P.aeruginosaに対しては, Meropenem (MEPM) が最も強い抗菌力を示し, 2μg/mLで全菌株の発育を阻止した。非ムコイド産生
P.aeruginosaに対してはAmikacin (AMK) およびABKが最も良好な抗菌力を示し, そのMIC
90は4μg/mLであった。非ムコイド型に対するCZOPの抗菌力も比較的良好で, そのMIC
90は8μg/mLであった。
K. pneumoniaeに対する抗菌力は, CZOP, Cefmenoxime (CMX), CPR, Flomoxef (FMOX) が最も強く, 0.063μg/mLで全菌株の発育を阻止した。
M.(B.) catarrhalisに対しては, いずれの薬剤も比較的強い抗菌力を示し, MIC90は4μg/mL以下であった。
呼吸器
感染症患者の年齢は, 70歳以上が全体の57.0%と半数以上を占めた。疾患別では細菌性肺炎と慢性気管支炎の頻度が高く, それぞれ50.8%, 23.8%であった。細菌性肺炎患者から多く分離された菌は
S. aureus (21.6%),
S. pneumoniae (24.7%), ならびに
H.influenzae (20.1%) であり, 慢性気管支炎患者においても
S. aureus (29.0%), S. pneumoniae (16.1%), ならびにH. influenzae (16.1%) が比較的多く分離された。抗菌薬投与前に
呼吸器
感染症患者から多く分離された菌は,
S. pneumoniaeおよび
H. influenzaeで, その分離頻度はそれぞれ22.3%および25.1%であった。前投与抗菌薬別に分離菌種を比較したところ, マクロライド系抗菌薬が投与されていた症例では,
P. aeruginosaが比較的多く分離され, その分離頻度は43.5%であった。
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