本研究は,東京都
杉並区
の済美公園における親水施設設置のプロセスとその後の評価を明らかにしたものである.都市化の進展によって,河川と人々のつながりが希薄になった高度成長期以降,全国に多くの親水公園が設置された.さらに,河川法の改正や多自然川型づくりの通達など,河川整備をめぐる法的・制度的変化が生じている.このような法的・制度的変化の背景から,河川整備の場面においてワークショップやその他の手段によって合意形成を図る取り組みが全国で行われている.本研究では東京都
杉並区
において行われたワークショップによる住民参加のプロセスを検証し,その後の住民意識をアンケート調査によって明らかにする.
善福寺
川は,
杉並区の善福寺池を水源として杉並区
内を南東に流れる一級河川である.2005年9月4日から5日にかけて発生した集中豪雨による水害によって,「妙正寺川・
善福寺
川河川激甚災害対策特別緊急事業」が採択された. 2005年に制度化された多自然型川づくりアドバイザーが事業主体である東京都第三建設事務所に派遣された結果,
善福寺
川に隣接する済美公園への親水施設建設計画が浮上した.東京都第三建設事務所は,多自然型川づくりアドバイザーの指示に従って親水施設の設計を検討し,
善福寺
川に隣接する済美公園の一部を改修し,ワンド状の緩傾斜護岸を建設する方針を打ち出した.さらに,河川の整備において住民からの意見聴取を義務付けた1997年の河川法改正の影響で,魅力的な
善福寺
川の整備案を住民とともにつくることを目的として,2008年の1月中旬から3月中旬までの期間で全4回のワークショップが企画された. 本研究では,済美公園の利用者属性とワークショップの認知度,完成した親水護岸をはじめとした公園施設の評価を調査するために,アンケート調査を実施した. アンケート調査の結果,親水護岸に期待する機能として上位を占めた回答は,「川沿いを散歩する」,「川の景色を楽しむ」といった機能であった.済美公園の親水護岸は,ワークショップ後の2008年7月28日に発生した都賀川水難事故の影響で水際に柵が設けられているため,水に触れたり川に入ったりすることができない構造になっている.しかし,一部の回答者は「川の中で遊びたい」,「川にふれたい」と回答しており,水辺の柵について管理者である行政と住民との意識統一を図ることが今後必要である.
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