営業税
廃税運動は,商業会議所を中心として全国の商工業者が外形標準の課税の撤廃を求めて政府と30年近く対立した運動である。本稿では,1922年の廃税運動を対象として,商業会議所,実業組合連合会,大日本実業組合連合会や日本綿糸布商同盟会の運動を中心に検証した。通説では,
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廃税運動の主体は,逆進的な税負担感を強く感じていた中小零細事業者であったとされてきた。しかし本稿では,事業者の規模ではなく,
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の課税標準である売上によって唯一課税されていた物品販売業における業種としての負担感が廃税の運動の契機になったことを示した。運動の結果,廃税は実現しなかったが,地租の軽減なしに
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を減税できた背景には,ワシントン軍縮条約により軍事費が拡大から縮小に転じたことや,都市の発展と農村部の利害の分化等により政治構造に大きな変化があったことを明らかにした。この時代の日本の政治経済システムは,米国におけるロビイング活動のように,利益団体が自らの利害を政策に反映させるため自律性と求心力をもって政府や政治に働きかけていたという特徴があった。
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