本稿では受胎告知を主題に据え,受胎告知画(聖告図)の鑑賞題材化を巡る多角的検討を展開すると共に,開発題材を提起する。その際,イタリア絵画を鑑賞対象に選ぶが,時期的にはこれまで集中的に扱ってきたルネサンス期よりも遡る,後期ゴシック期を取り上げ,場所的にはフィレンツェ等と比べやや外縁的位置付けとなるシエナに焦点を絞り,画家はその地で活躍し,国際的影響力を発揮して
国際ゴシック
様式の開花に貢献し,日本でも知名度が高いシエナ派の代表格,シモーネ・マルティーニを選定した。作品は黄金背景に天使とマリアが対峙する「受胎告知(1333年)」である。本作の読解基調の鑑賞学習を効果的に進めるため,学習要素を熟慮し,計10段階で成る学習プログラムを設計した。本稿では,その内,第5項目までを述べ,第6項目以降は続篇に譲る。
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