キチンの土壌への施用がイネ個体群の物質生産に及ぼす影響を明らかにするため, 乾物生産特性および子実生産特性について検討した.1994年および1996年はキチン施用量(50gm
-2, 100gm
-2, 200gm
-2および500gm
-2)が増加するにつれて玄米重が増加する傾向が認められ, キチン500g区は化成肥料区とほぼ同等の玄米重が得られた.1995年はコブノメイガが大発生し葉色が濃いキチン500g区と化成肥料区においては葉が食害を受けたため, 玄米重はすべてのキチン施用区と化成肥料区では差異が認められなかった.1996年の収量構成要素の調査結果から1m
2当たりの籾数が増加するにつれて玄米量が増加する傾向が認められた.登熟歩合は無施用区とすべてのキチン施用区では約90%であったが, 化成肥料区は低かった.これは, 化成肥料区では全生育期間を通じてLAIが高く, 出穂後は多粒による穂の遮光も加わることにより受光態勢が悪化しCGRが低下したことが原因と考えられた.これに対して, キチン500g区ではLAIが最大約4.5で出穂後も受光態勢が良好でCGRが高く維持された結果, 化成肥料区の玄米重に匹敵する収量を得ることができたと考えられた.
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