【はじめに】本症例は、慢性リウマチや変形性膝関節症といった疼痛を伴う疾患に加えて、小脳出血を発症した症例である。協調運動機能の低下から入院期間中に左膝関節痛が悪化し、Activities of Daily Living(ADL)動作が全介助レベルに陥った。しかし、介入方法の見直しから疼痛が軽減し、ADL 動作の獲得に繋がったため、ここに報告する。なお、ヘルシンキ宣言に基づき同意を得た上での報告とする。
【対象と経過】対象は80 代の女性であり、入院時から左膝関節にNumerical Rating Scale(NRS)で8/10 の痛みがあったが、入院1 ヶ月後には疼痛が消失し、NRS で0/10 となった。病棟での生活はPick up walker を使用して自立して行えていた。しかし、活動量が増加すると、徐々に疼痛が悪化し、安静時でもNRS が10/10 の状態となり、ADL 動作全介助レベルとなった。疼痛が最も悪化した入院3 ヶ月目から、申し送り・チームカンファレンスを利用して、介入スタッフが共通してプラスのフィードバックのみを行い、脳内の
報酬系
への働きかけを行った。また、膝痛が強い時には、失敗体験によるストレスがかからないように、上肢・体幹へのアプローチや簡単な課題から行うよう統一した。
【結果】 介入方法を変更することで、痛みを訴える頻度が減少し、病棟では車いすを使用してADL 動作が可能となった。リハビリでは、Pick up walker を使用して5~10m 歩行可能となった。他患者とのコミュニケーションも増え、水などを配る様子も見られた。リハビリへの意欲も向上し、自ら「歩きましょう。」と、訴えることも増えた。
【考察】 成功体験や褒賞・共感を与えることで
報酬系
領域の促進を図った。
報酬系
領域の活動は、下行性疼痛抑制系に作用し、痛みを抑えると考えられているため、ADL 動作獲得につながったと考えられる。また、
報酬系
のドーパミンの作用により、運動学習効果を高め、膝関節への負担の少ない動作学習が可能となったと考えられる。
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