店舗での営業を伴う小売業の業務には,大きく,商品の調達・販売を巡る業務と,店舗の開発・運営を巡る業務の2つが存在する.小売業は,この2つの業務の調整活動あるいは相乗効果によって利益を獲得しているのである.しかし,これまでの小
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際化研究は,海外での商品の調達や販売業務の方に関心を集中させてきたため,小
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際化のダイナミズムを表すモデルにも,海外での店舗開発やその運営がもたらす影響が考慮されていなかった.そこで,本稿は,海外における小売店舗不動産の開発や運営が,小売業の国際行動にどのような影響を与えるのかを整理検討し,小
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際化のダイナミズムにおける店舗不動産の役割を明らかにすることをめざした.具体的には,これまでの筆者によるアジアの日系小売業の調査を基に,店舗不動産が与える影響を,(1)市場参入時における店舗開発が与える影響,(2)市場参入後における店舗開発が与える影響,(3)市場参入後における店舗運営が与える影響,の3つに分けて整理・検討した.そこでは,とくに現地子会社の業績(利益/損失)に与える影響の解明が重視された.その結果,商品の調達・販売部門と店舗の開発・運営部門との調整の中で海外事業の業績(利益/損失)が決定されていき,その業績(利益/損失)に対する評価がその後の国際行動(その意思決定)につながっていくという,小
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際化の組織レベルでのダイナミズムをモデル化することができた.
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