尿素とモリブデン酸とから新化合物一モリブデン酸尿素が得られたので,その性状について調べた。
尿素とモリブデン酸との反応を主として水溶液中で行ない,生じたモリブデン酸尿素を単離したのち,X線回折法で検討し,ついで化学分析の結果, H2Mo20,2CO(NH2)2,H2Mo3010,3CO(NHx)2(CO(NH,),を以下urと略記する)のいずれか,あるいはそれらの混合物と解された。
モリブデン酸尿素は白色の微粉末で結晶水をもたず,水,ジメチルスルホキシド,メタノール,エタノルに若干溶解するが,一般の有機溶媒には不溶である。融点はみられず,TG,DTA曲線などか ,ら200C前後までにごく一部の分解がみられるが比較的安定で,240~255C辺で分解し,290℃では完全に三酸化モリブデンに変化することを認めた。密度は2,558~2,571 9/cms(25C)で,屈折率 (nD)は1.769~1770であった。また,電導度測定,分子量測定から希薄水溶液中では尿素とモリブデン酸に解離していることがわかった。
抄録全体を表示