筆者は,韓国国立忠南大学校付属博物館に所蔵されている論山郡開泰寺出土の瓦を観察する機会を得ることができた。本稿は,その観察結果から知ることができた瓦の製作技法の特徴やその年代を明らかにし,そこから考えられる開泰寺の再建年代について考察することを目的としたものである。
対象とした資料は,凸面に銘文をもつ平瓦に限った。それらの瓦には,紀年銘のあるものが含まれており,製作年代が明らかにできるからである。まず,開泰寺出土のそれぞれの銘文平瓦の色調,胎土,焼成,凸面の叩き文様と調整法などの製作技法の特徴について明らかにした。
次に,その存続年代が高麗時代を含むとされるその他の寺院や遺跡から出土した紀年銘のある瓦を資料として取り上げ,開泰寺の瓦と同様に,その観察結果を述べた。
以上の観察結果をもとに,開泰寺出土の銘文瓦をA類~D類に分類し,表を作成した。この分類をもとに,開泰寺以外の寺院・遺跡からの出土瓦も分類し,それらの瓦がA類,E類,F類に分類されることを述べた。それと同時に,製作年代が明らかな紀年銘を持つ瓦について,同じ年代の紀年銘を持つ瓦は出土遺跡が異なっても同じ製作技法で作られていることを明らかにした。また,銘文を「左の行から縦書きで右の行へ」表わす方法は,瓦の年代を示す指標となり得ることを指摘した。このような結果をもとに,開泰寺出土のそれぞれの銘文瓦の年代について考察した。
最後に,開泰寺出土の銘文瓦の年代とその出土状況及び『高麗史』に出てくる記事をもとに,「金堂」第1期建物が廃棄されたあと,第2期建物が再建された時期について考察した。そしてさらに,『高麗史』の記事から推定される第2期建物が焼失した理由と,第3期建物としてそれが再建された時期についても言及した。
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