1. 富士山山頂域に進出する種子植物および植物群落の現状を明らかにすることを目的として,2006-2019年に種の記録および群落調査を行った.
2. 富士山山頂域においては,1966年以前における種子植物の記録はない.
3. 2006年より前の文献記録を含めると,2019年までに富士山山頂域において7科9種の種子植物が記録された.
4. 山頂域での確認種のうち,イワスゲ,イワツメクサ,イワノガリヤスは個体数が多く,オンタデ,ミヤマヌカボ,ミヤマオトコヨモギは個体数が少なかった.木本種ではミヤマヤナギの1個体が確認されたほか,ナガハグサが帰化種として初めて確認された.
5. 亜氷雪帯に属する山頂域(3660-3776 m)で記載された植物群落は,高山帯(3000-3550 m)に本拠のあるフジハタザオ-オンタデ群集の構成種を主に,そのほか高山帯・亜高山帯の種群が単生,散生したモザイク状の疎生群落となっていた.この群落をイワスゲ-イワツメクサ疎生群落とした.
6. 山頂域では,山小屋,測候所などの建設に伴い平坦地や安定した立地が形成され,種子植物の侵入が容易になっているものと考えられる.帰化種ナガハグサの出現は,登山者などによる種子運搬の結果と考えられる.このように,富士山山頂域における種子植物や疎生群落の出現には,人為的要因も関与しているものと考えられた.
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