1) オビヒトリの前部糸腺が最終令であるVII令の3日目から肥大 (分泌腺化) する機構を
しらべようとして, VI令及びVII令期に体躯結紮実験及び移植実験を行つた。
2) VI令期を60時間経過した時期に頭・胸間を結紮すると, 令を1つ早めて前部糸腺を早期に肥大させることができる。ただしその虫体は蛹化しない。
3) VII令期結紮では, 3日目までの未だ前部糸腺が肥大していないものは頭・胸間を結紮してアラタ体の影響を除いても肥大しない。
4) 肥大の臨界期前に頭・胸間で結紮したVI令幼虫または蛹化の臨界期前のVII令幼虫に, 盛食期の前胸腺または脳を移植すると, 前者では前部糸腺の早期肥大を惹起し, 後者では蛹化を誘発する。
5) 前部糸腺の肥大はVII令3日目からおこり, 蛹化の決定 (臨界期) はVII令9日目で時期に相違がある。これはともに同一要因 (前胸腺ホルモン) によつて誘発される現象であるが, 前部糸腺の肥大は幼虫器官としての発育成長相で反応閾値が低く, 蛹化は分化成長相であつて反応閾値が高いためと思われる。
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