本論説は,「統計からみた山村および漁村の兼業農家の性格」経済地理学年報 (1960) の続篇である.そこでは兼業農家の地域性を,農家外部の条件と比較しつつ議論を進めた.この小論では,内部条件との関係に中心を置く.
まず兼業農家率と経営耕地面積の地域性の間の相関関係を検討し,次いでそれより高い係数の予想される農業粗収益,労働投下量との相関をみた.係数はそれぞれ-0.58, -0.65, -0.73である.
このように次第に高くなる理由を具体的に地域別に検討すると,農業労働の収益性および受容力,経営耕地面積が重要であることがわかる.この場合の農業の労働受容力は,農業の限界収益と外部の賃金水準との均衡から生ずるとみるべきではない.わが国のように雇傭が限られている場合は,むしろそれとは別個に,収益性は低くとも自然条件の許す限り,農業部門の労働集約化が行われる.これを労働の受容力を呼ぶべきである.
上述の3要因のうちまず前の2要因を組み合わせて, (1) 収益性の低い労働粗放的な地域, (2) 収益性の高い労働粗放的な地域, (3) 収益性の低い労働集約的な地域, (4) 収益性の高い労働集約的な地域の4種を得,さらにこれを平均経営耕地面積の大小によつて4区分し,合計16種の地域を得た.このうち14種の地域が現実に存在する.第11図びつにこれらの地域を図示した.
第1図とこれを比較しつつ兼業との結合を検討すると1-4へ,経営耕地面積については小-大へと兼業との結きが強くなる.
最後に具体的な兼業の条件と結びつけ,農家経済上に問題点のある地域を概観した.
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