小山内薫・山田耕筰・石井漠の三人が中心となって結成された実験的な劇団<新劇場>は、演劇の改革を標榜するとともに「舞踊詩」という新しいジャンルを提唱した。この舞踊詩のたどった過程は、大劇場と小劇場、高級な劇と民衆のための劇といった区分やそれらの間の争闘をも無力化する。また、震災後に始まるラジオ放送は、集団としての観客ではなくて、多数の個人としての聴取者を生み出すことになる。こうした芸術ジャンルの変容や受容形態の多様化を考えるための原点の一つとして、<新劇場>の活動をとらえ直す必要がある。
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