嘘、皮肉、アイロニー、
嫌み
などの本音ではない言語表現は「修辞表現」と呼ばれることがある。これら修辞表現はいずれかひとつが研究対象となることが多く、修辞表現を統合的に理解する認知過程が十分に明らかになっていない。そこで本研究は、いずれの修辞表現なのかを判断する認知過程の特徴を明らかにすることを目的として行った。実験では参加者をペアにして、台詞の聞き手が話し手の意図を本音、照れ隠し、嘘、
嫌み
の4つから選択する課題を用いた。さらに聞き手が1文字または7文字の文字列を記憶する二重課題により、認知負荷の実験操作を行った。結果、認知負荷が低い場合に比べて高い場合に、
嫌み
の選択が減少することが示された。
嫌み
や皮肉の理解が意識的で労力がかかる処理であることは先行研究から予測可能であるものの、
嫌み
の理解が照れ隠しや嘘と比べて多くの労力が必要な処理であるという点から、いくつかの可能性を提示したい。
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