【はじめに】
運動イメージ機能の発達過程を明らかにすることは,小児理学療法におけるアプローチを考える上で有用である.運動イメージ機能は幼児期において顕著な発達を示すと考えられているが,その発達過程を具体的に検討した研究は少ない.また,幼児を対象とした評価手法も少なく,開発がもとめられている.本研究では,3~5歳児を対象に幼児運動イメージ機能の評価を実施し,その発達特性について検討した.
【方法】
対象は研究協力に同意が得られた幼児46名(3歳児クラス:18名,4歳児クラス:10名,5歳児クラス:18名)およびその保護者であった.運動イメージ機能の評価は,新田らによって提案されているN式幼児運動イメージテストを使用して実施し,口答指示による絵カード選択レベル(イメージ課題),口答指示による姿勢変換レベル(姿勢変換課題)の得点を算出した.保護者に対しては,児の発達全般に関する質問紙調査として乳幼児発達スケール(kinder infant development scale:KIDS)への回答を依頼し,8つの領域別(運動,操作,理解(言語),表出(言語),概念,対子ども(社会性),対成人(社会性),しつけ)に集計・得点化した.得られた結果より,①運動イメージテストにおける得点間の関連,②運動イメージテストの得点と評価時月齢数の関連,③運動イメージテストの得点とKIDSの各領域得点の関連について,Pearsonの積率相関係数を用いて検討した.また,④運動イメージテストの得点を従属変数,運動イメージテスト得点と有意な相関を認めたKIDSの領域得点を独立変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った.
【結果】
被験児46名中,36名がイメージ課題,姿勢変換課題とも実施できた(3歳児クラス:7名,4歳児クラス:1名,5歳児クラス:2名は,途中でやめてしまうなどして評価を最後まで実施できなかった).36名のデータを解析した結果,イメージ課題得点と姿勢変換課題得点に有意な相関を認め(r=.56,p<.01),両得点とも検査時月齢数と有意な相関を認めた(イメージ課題:r=.51,姿勢変換課題:r=.61,何れもp<.01).運動イメージテストとKIDSの各領域得点の関連について,イメージ課題および姿勢変換課題得点はいずれも運動,操作,言語理解の領域得点と有意な相関を認め,さらに姿勢変換課題得点は表出(言語),対成人(社会性)の領域得点とも有意な相関を認めた.イメージ課題得点,姿勢変換課題得点を従属変数とした重回帰分析では,いずれにおいても理解(言語)の領域得点が有意な独立変数として抽出された.
【結論】
幼児運動イメージテストの得点は月齢と有意な相関を認め,幼児期における運動イメージ機能の発達を捉える可能性が示唆された.また,その得点は言語(理解)の得点と関連していることが示された.今後,運動イメージ機能における言語理解の機能・発達の役割についてより深く検討していく必要がある.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の実施にあたり,鳥取大学地域学部倫理審査委員会承認(29-04)を得た.また,対象児の保護者には情報の取り扱いについて説明し,書名による同意を得て実施した.
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