古紙パルプを含む上質紙について植林から廃棄に至るライフサイクル・インベントリーを試み, 以下の結果を得た。
(1) CO
2量を化石燃料由来とバイオマス由来の排出量および木材や紙に固定された量に分けて解析することにより, CO
2排出量に対する植林や古紙の役割を明らかにすることが出来た。
(2) 紙の全ライフサイクルでの, 化石燃料に由来するCO
2排出量は紙製造工程が最も多かった。SOx排出量の場合は, チップ輸送時の排出量が最も多かった。これは, 紙の製造工程では排煙脱硫装置による処理が行われているが, 船舶等の輸送機関では排気の処理が行われていないことによる。
(3) 古紙パルプ配合率の影響についてシミュレーションを行った結果, 配合率が増加すると, 化石燃料とバイオマス由来の合計CO
2排出量は減少する傾向にあった。ただし, 古紙パルプ高配合に伴う品質低下を防止する目的で, 収率50%まで精製した古紙パルプを用いると, 配合率が増加しても合計のCO
2排出量は減少しなかった。いずれの場合も化石燃料由来のCO
2排出量は古紙パルプ配合率と共に増加する傾向にあった。
(4) 回収した古紙の一部分をサーマルリサイクルすることにより, 古紙パルプ製造に伴う化石燃料使用量の増加を抑えうることが明らかになった。
(5) 一連の検討を通じて, 植林の取扱い方法, ボイラーで発生するエネルギーの配分方法, 製紙用薬品製造時の環境負荷データの整備等が今後の課題として明らかになった。
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