郡上八幡は中世末期に砦を構えた地に城を築き、近世初期に城の改築や城下町の整備にされた城下町である。今回、伝統的建造物搗群保存対策調査の一環で実施した都市史調査で、絵画資料や文献資料を収集し、分析した。近世の絵画資料では城下町の骨格に大きな変化はなく、近代化を経ても町人地はよく継承され、武家地は細分化するものの町家群が建ち並んでいることが郡上八幡の特徴である。本稿では、城下町の継承に関して、近世に的を絞り絵画資料と文献資料からその構造や構成要素について分析し、近世の城下町の姿を明らかにすることを目的としている。また、郡上八幡の町家は小規模なものが多いことが特徴だが、各地区の敷地形状が地形により異なるため、一概に同一平面計画とはいえない。町人地の敷地形状を文献資料により確認することで、町人地の町割の継承と、小規模平面が多いことが裏付けされた。また、家主・仕込家・割家など、借家や購入、分割を繰り返す、城下町の町屋敷の所有形態も明らかとなった。今後は、近代の資料も併せて分析し、城下町の町割復原や、近代化を明らかにすることにより歴史的風致の確かな裏付けとなる研究が望まれる。
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