高血圧は多くの臓器に障害を引き起し生命予後に大きな影響を与えるが, 腎臓も例外ではない. 現在わが国で末期腎不全により維持透析療法を受けている患者は, 25万人を超えたといわれている. わが国の透析療法は国際的にも大変優れており, 透析歴20年以上の方は1万6千人を超えている. しかし, 透析療法は, 腎臓のもつ働きを完全に補えるものではなく, またいろいろな面で負担も大きいことから透析導入を少しでも抑えたいと考えている.
透析導入の原因となる疾患は, 糖尿病腎症が最も多く, ついで慢性腎炎, 高血圧による腎障害 (腎硬化症) である. 高血圧と腎臓病とは密接に関連している. つまり, 高血圧が持続すると腎硬化症となり, 腎臓病が進行すると高血圧になる (腎性高血圧). 国際的な報告でも, 血圧が高いヒトほど透析になりやすいといわれ, 多量の蛋自尿が出続けることが腎機能の悪化につながるとされている. この悪循環が, 急激にあるいはゆっくりと腎機能の低下を招くため, この悪循環を断ち切ることが透析への進行を抑えることになると考えられる. また, 十分な降圧治療をすることによって予後は明らかに改善することから, 高血圧の腎臓に及ぼす影響を正しく理解し, 適切に治療することが大変重要である. 具体的には, 体重管理 (標準体重の保持), 食塩制限と降圧薬による血圧コントロール (一般的降圧目標: 130/80mmHg未満) が基本である. 腎臓病が原疾患である場合には, 腎臓病に対する治療 (蛋白尿・血尿の改善, 腎機能の保持など) も行う必要がある. 食塩摂取量は6g/日程度に制限する. 降圧薬は, 腎血流量を低下させずに, 十分な降圧と蛋白尿を低下させるような薬物 (ACE阻害薬, アンジオテンシンII受容体拮抗薬, カルシウム拮抗薬, 降圧利尿薬など) を選択するのが原則である.
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